1.立体になった姿を先に想像する
ポスターやチラシのデザインを大きく違うところはやはり紙袋は立体物という点です。
あまり立体物のデザインをしたことがない場合は、まずはそこで戸惑ってしまうかと思います。
頭の中だけで想像するというのも難しいかと思いますので、実際に手を動かしてみましょう。
PDFを印刷して、ミニ紙袋を作ってみましょう
早速ですが、初めに、こちらからPDFのデータを印刷して、
紙袋の模型を折り紙のように作ってみましょう!
紙袋のペーパークラフトダウンロード
▼作り方はこちらをご覧ください。
紙袋を作ってみよう!ペーパークラフトのご案内
完成したミニ紙袋にデザインを書き込みましょう!
▼完成した真っ白のミニ紙袋はこちら。※こちらを原稿とします。

この立体的な原稿に、デザイン案をざっくりと書き込んでみましょう。
突然デザイン案は書けない!という方にオススメの方法
参考にしたい紙袋や好きなブランドの紙袋のデザインを、白地の模型に書き入れてみて、どんなデザインがされているかを具体的に確認しましょう!
正面、裏面、マチ(側面)、底面、口折、内面・・・
どんなデザインになっているでしょうか?
よく見ていくと、デザインの内容自体は意外とシンプルな事が多いようです。
それを元に、今度は他社の例も参考に、デザイン案を手書きで書き入れてみましょう!
全体像づくりのポイント
・細部より、全体的な印象や、パッと見た時の雰囲気が重要です!
・細部のデザインは最後にしましょう!
・製袋したものと展開図とを見比べて見ましょう!
2.改めて、紙袋デザインの基本構造を理解する
紙袋の正面と裏面ってなに!?
実は、紙袋には正面と裏面があります。
紙袋を広げて立体にした時には分かりにくいですが、裏面をよく見ると・・・折り目があります。

裏面には、折り目があり、更に、折りたたんだ時には隠れる範囲があります。

折りたたんだ状態まで考慮したいデザインの場合は、こちらの隠れる範囲には注意が必要ですね!
塗り足しは正面と裏面が重視される
紙袋には正面と裏面がある事が分かりましたが、塗り足しはどうすれば良いのでしょうか?
紙袋のデザインでは、正面と裏面のデザインが優先されます。
左右はマチ方向へ塗り足しを行い、上は口折へ、下は底面へ塗り足しを行います。

※塗り足しの幅はテンプレートに合わせましょう!
紙袋には、紙マークが必ず入ります!
お土産の箱や、紙袋でよく見かける“紙マーク”。
これは、日本の法律上、表示が義務付けられているものです。
紙マークをエンボス加工のみにしたり、色を変更する事は可能ですが、紙マークとしての視認性が高いものを製造する責任があります。
また、特色1色で印刷する時には紙マークも特色にするなど、印刷色内に変更する必要もあります!
3.用紙と表面加工をデザインコンセプトに合わせる
用紙と表面加工がデザインに合っていると、全体のデザインがバシッと決まります。
世の中に沢山ある紙袋。
まずは、お気に入りのブランドの紙袋や、参考になりそうな紙袋が、どんな用紙と表面加工で作られているのか見てみましょう。
※ツヤツヤの質感、マットな質感、シンプルな晒の用紙など、ここでは、用紙の名前や表面加工名は分からなくても大丈夫です。
次に、そのブランドが用紙の選択によって与えているイメージを再確認する為に、違う用紙や表面加工だったらどうなるかを想像してみましょう。
Appleの紙袋の表面加工がもし、マットPPではなく、グロスPPだったら・・・等、真逆の印象を想像すると、ブランドがその用紙を選択した意味を感じ取れるかもしれません。
その上で、作りたい紙袋のデザインの場合は、どんな用紙と表面加工のイメージに合いそうでしょうか?
用紙と表面加工の選び方のポイント
・予算の関係での妥協案と、譲れないポイントを明確にしましょう!
・表面加工を比較したコラムもご覧ください!
4.トータルでのデザインに欠かせない紐の選定
紐色だけアクセントになるように色を変えてみたり、
紐色をロゴマークの色と合わせてみたり・・・
紙袋のデザインは正面のデザインが注目されがちですが、
その正面を引き立たせるのは、恐らく紐です。
こちらのハンドルの見本【ハンドルを選ぶ】もご参考にお選びください。
ぜひ、紐選びもトータルデザインとして、楽しんでお決めいただければと思います。
紐選びのデザインアイディア
選べる種類も多く、どんな紐が良いのかわからないというかたは、下記のデザインアイディアもご参考にお選びください。
・紐色と正面のロゴを近似色にする
・紐とマチだけを近似色にする
・全体の印象をスッキリとさせる為、紐の取り付けをタックシールかOFJにする
・紐色をPANTONEで染色して理想の紐色に近づける
・紐と正面や裏面のデザインに関連性を持たせる
※紐穴の位置はズレる場合が多く、要注意です
・正面や裏面には予算をかけず、思い切って美しい紐を選ぶ
・紐には予算をかけず、思い切って特殊加工など他の魅せ方にデザインの重点を置く
紐穴に注意!
ハンドル(紙袋の紐)をつけるには、基本的には、紐穴が空きます。
紐穴の位置は商品によっても異なりますが、開口部から35mm程度下までの範囲に、重要なデザインを配置することは危険と考えておきましょう!
「基本的には」というからには、実は、紐穴を開けない方法もあります。
紐穴を開けずに、ハンドルを付けたい方は、タックシールやOFJのハンドルをご希望の旨をご相談されてみてはいかがでしょうか?
5.紙袋のデザインはマチで決まる!?
マチは紙袋の横顔です。
どの角度から見ても、デザイナーやお客様のお気に入りになるよう、ぜひ、マチのデザインにもこだわってみてください。
世の中には、様々なデザインの紙袋がありますが、綺麗なデザインはマチに手を抜いていません。
もちろん、何も手を加えていない、白のままでも美しい紙袋のデザインも沢山あります。
マチのデザインのポイント
紙袋という立体物だからこそこだわりたい。デザイン全体に何を求めるか?その為にマチはどうするか?
というところを考えていただければ、必ずいいデザインの紙袋が仕上がるかと思います。
マチのデザインアイディア
マチのデザインを検討する上で、下記のデザインアイディアもご参考にご検討ください。
・マチにはあえて、何も入れない
・マチに華やかなデザインを入れて、正面と裏面をシンプルにする
・マチだけベタ塗りにする
・正面からマチ、そして裏面にかけて、ユニークな一続きのデザインにする
・マチにホームページのURLを入れる
・正面、マチ、裏面すべてをベタ塗りにして、デザインの持つ雰囲気を強化する

6.さり気ないこだわりが際立つ!口折にもデザインを入れよう!

弊社のサンプルのように、口折にもデザインを配置する事ができます。
会社やブランドのホームページであるURLを配置したり、柄のデザインや、シンプルなベタを入れたり。使い方は様々です。
裏生地がオシャレな服のように、紙袋の内側にもこだわってみると、印象がまた一つ変わりそうです。
口折のデザインのポイント
・PDFを印刷して、ミニ紙袋を作ってみましょう。で作った紙袋を再び展開していただければわかっていただけるかと思いますが、入稿用の展開図上では、口折のデザインを上下逆になります。
口折のデザインの場合はご注意ください。
口折のデザインアイディア
口折のデザインを検討する上で、下記のデザインアイディアもご参考にご検討ください。
・口折にホームページのURLを入れる
・口折にもベタを入れ、イメージカラーをより多く見せる
・シンプルさが売りなので、口折にもデザインを入れない
・口折だけにデザインを施す
・正面や裏面が賑やかなデザインの為、口折にはデザインをしない
7.印刷物は印刷後が勝負!印刷前に気をつけたいポイント
画像の解像度にご注意!
ものすごく綺麗なデザインを描いても、使っている画像の解像度自体が低いと、どうしても印刷後の画像には、ガタツキが出てしまいます。
解像度が良い、悪いって何を基準にしたら良いの!?という方は、解像度350ppi以上を基準にお考えください。
▼Illustratorで解像度が350ppi以上かどうかの調べ方はこちらです。
画像を選択した状態で、リンクパネル内をご確認ください。

細いデザインには、かすれるリスクがあり!
画像がないデザインでも、細すぎて印刷をかすれさせない事は重要です。
オフセット印刷では、0.1mmを下回るような線や塗りは印刷する事は難しく、かすれたり、綺麗に印刷されないリスクがあります。
デザイン上どうしようもない場合や、かすれても良いという部分を除き、くっきりと印刷に反映させる必要がある箇所が細すぎないように・・・。
シンプルな事ですが、大事な部分が細いという事は、思わぬ結果を招く可能性があります。
※対応できる線幅は印刷会社や印刷方式によって異なりますので、どうしても細くなってしまう場合は要確認ですね!
印刷色を安定させよう!
「4色フルカラーは成り行きになります。」
デザインデータを入稿していると時々見かける、この一言。
実は、ここにも印刷の仕上がりを綺麗にするヒントが隠れています。
4色フルカラー(CMYK)でのベタ塗りにはムラが出たり、イメージと微妙に異なる色になる場合があるので、“大きく変わらないけど、やってみないと分からない”という意味ですが、デザイナーとしては、正確に色を決めたい場合がありますよね。
特に、イメージと印刷されたものの色味が違う!なんて事は避けたいものです。
そんな時には特色です。
PANTONEやDIC等のカラーチップ(印刷された公式のもの)を使うと、それに近しい色で印刷されます。
特色選定のポイント
※インターネットで確認できる特色の色は、あくまでもモニター上での色なので、必ず公式の印刷されたカラーチップ(ブック)で確認する事が重要です。
※印刷色に100%の部分がなく、80%のみのデザインを作りたい場合などは、特に注意が必要です。
印刷にはムラやカスレが出る場合があります。
そんな場合も、K80%を特色の近似色にしてみましょう!
8.特殊加工で差をつける!
紙袋で人気の高い、箔押しには様々な色の種類があります。
また、ロゴだけにエンボス加工を入れたり、シンプルな紙袋のデザインにUV加工のみで図柄を並べたり・・・
特殊加工はデザインのレベルを急激に引き上げると言っても過言ではありません。
特殊加工の例はこちらをご覧ください!

9.高級な紙袋のデザインで使われる裏技 内面にもデザインを入れる
高級ブランドの紙袋のデザインは必ずと言って良い程、内面も計算されています。
内側印刷のデザインテクをこっそりご紹介!
▼内面を黒色のベタ塗りに!ここで差がつく高級感の演出!
例えば、黒色と白色の2パターンの紙袋を用意しているブランドC社の場合、白色の紙袋は内面も白ですが、黒色の紙袋は内面も黒のベタ塗りになっています。
あたかも、黒い用紙を使っているかのようにベタが入っている事で、全体の印象から、極限まで“安っぽさ”が取り除かれています。
▼内面だけ鮮やかな色!しつこくないのに個性的なデザインに!
ブランドR社の場合は、外側はオフホワイトですが、内面だけオレンジのベタ塗りが入っています。
服のブランドだけあって、内側だけオレンジという使い方が上手です。
このちょっとしたこだわりに心を捕まれますね。
▼透明感のある技ありデザイン!鏡写しにしたロゴを内面の同じ位置に配置!
ブランドM社の場合、正面にロゴマークを配置して、内面の同じ位置にロゴマークを配置しています。
ロゴマークと紙袋自体があたかも透けているかのように、とても透明感のある仕上がりで、見る人を涼しい気持ちにさせてくれます。

10.改めてデザインを立体で確認する
細部の前に、全体を!
細部までデザインを作りこむ前に、ぜひここで一度、全体のイメージを立体的に確認してみましょう。
デザインデータを紙袋用のテンプレートの上で作成したら、全体をA4に縮小して印刷し、もう一度、「1.立体になった姿を先に想像する」の手順で組み立ててみましょう。
難しい場合は、それっぽい形に無理やり折ってみて、立体にするだけでも、充分なイメージづくりになります!
イメージが理想通りであることを確認できれば、細部の調整をして完成です!
まとめ
紙袋のデザインは、最初にテンプレートを見ていると、なんとなく難しく感じるかもしれません。
ですが、先に立体的に完成した全体像を固めていくと、楽しく、工程自体は意外とシンプル。
そして、作りがいのあるものです。
きっと、また別のデザインもやってみたくなるかと思います!
入稿のルールや気をつけるポイント等などはこちらの紙袋のデザインの入稿ガイドもご覧くださいませ。