オフセット印刷については上でご紹介しましたが、そのオフセット印刷とよく比較される印刷方法に「オンデマンド印刷」という印刷方法があります。
耳にされたこともあるかもしれませんが、この「オンデマンド印刷」とはどのような印刷なのでしょうか?
オンデマンド印刷は、すごく簡単に表現すると、コピー機と同じような印刷方法で、オフセット印刷で用いるような版を使わず、直接紙などに印刷をすることができる印刷方法です。
どちらも一長一短があるので、分かりやすいように
「料金」「納期」「クオリティ」
この3つの観点から比較してみます。
料金
それでは、まず重要な要素である料金に関してですが、こちらは「生産ロット」と「仕様」という回答になります。
料金に大きく関わってくる部分として『印刷版の有無』が挙げられます。
オフセット印刷はここまででご説明した通り、インク1色ごとに版を1つ必要とします。
この版は薄いアルミプレートになっており、他の印刷方法で用いる版の中では比較的安価です。
しかし固定費として確実にかかってくる費用のため、ロットが少ない内は価格への影響が大きいと言えます。
その点、オンデマンド印刷は版を必要としません。全てデザインデータをベースに直接色を吹き付けて印刷します。
そのため、小ロットの場合はオフセット印刷に対し、かなりの価格優位を誇ります。
オンデマンド印刷が好評なのはこの点が大きいです。
しかし、先ほど「小ロットの場合は」と付け加えた通り、大ロットになると価格差がなくなってきます。
価格の分岐点は仕様や色数によりけりですが、
この2点のどちらかが当てはまれば、オフセット印刷も検討の余地があると思います。
オフセット印刷は版を作る必要がある反面、同じデザインで2回目以降の生産(単純増版)であれば、以前作った版を利用できる場合もあります。
継続的に印刷する必要があるかどうかによってはオフセット印刷がお得になる可能性もあります。
単純に価格だけを見た場合、「シンプルで大量につくる」「継続的につくる」ならオフセット印刷、「小ロットで多色印刷」ならオンデマンド印刷がお勧めです。
納期
納期は基本的にオンデマンド印刷に軍配が上がります。
印刷速度ではオンデマンドが劣る場合も多いですが、オフセットは版の製造期間がどうしても必要になるため、納期が長くなります。

枚数が数千、数万になると輪転機が使えるオフセット印刷が早く仕上がる場合もありますが、少ロット〜1000枚程度であれば、確実にオンデマンド印刷が短納期で完成します。
また、多色刷りの場合は更に差が開きます。
これは一度に4色フルカラーで吹き付けられるオンデマンド印刷と一度に1色ずつしか印刷できないオフセット印刷を比べると、オフセット印刷のほうが工程が多くなるためです。
このように多くの場合はオンデマンド印刷のほうが早く仕上がるため、お急ぎの場合は必要分をオンデマンド印刷で注文するほうよいでしょう。
クオリティ
印刷クオリティという点では、確実にオフセット印刷のほうが高いです。
オフセット印刷は版を作って印刷するため、大量に印刷をしても再現性が一定で安定しています。
インクが直接印刷対象に触れるため、均一かつ鮮明に印刷されるという特徴があります。
加えて、インク自体も液体インクを使っているためムラができにくいです。
一方オンデマンド印刷は、レーザーでその都度焼付を行うため、固形の版と比較すると安定性に欠けます。
また、インクも粉末インクなので、液体のように均一にならないことがあり、色ムラやモアレ現象(※網を2つ重ねた際に模様が浮かび上がる現象です)が起こることもあります。
オンデマンドの品質は昔に比べてかなり向上しているため、パッと見た感じでは十分綺麗です。
しかし、写真を始めとするフルカラー印刷では濃淡表現の差が如実に出てしまいます。
精密なデザインを綺麗に印刷したい場合はオフセット印刷、特にこだわりが無ければオンデマンド印刷で良いと思います。
オフセットVSオンデマンド まとめ
さて、オフセット印刷とオンデマンド印刷について比較してまいりましたが、簡単にまとめると以下の用になります。
印刷方法 |
オフセット印刷 |
オンデマンド印刷 |
料金 |
大ロットor増版なら安い |
大ロットor増版でなければオフセットより安い |
納期 |
長い |
早い |
印刷クオリティ |
高い |
低い |
こんな方にお勧め |
・出版物やクオリティが重要な方
・大量に注文される方
・繰り返し注文する可能性がある方 |
・そこまでクオリティ重視では無い方
・100枚以下など小ロットをお考えの方
・一度きりの製作になりそうな方
・納期をお急ぎの方 |
余談ですがフルカラー印刷といえばかつてはグラビア印刷という方法が主流でした。
グラビアアイドルという言葉も、フルカラー写真のページ=グラビア(で印刷された)ページと呼ばれていたことから付いた名称です。
それからどんどん印刷機の改良を重ねた結果、現在ではグラビアページのシェアのほとんどをオフセット印刷が獲得するまでになっています。
オンデマンド印刷がこのままどんどん進化していけば、品質でも劣らない万能な印刷方法になっていくかもしれませんね。